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「GTA」ロックスター社の元デザイナー男性、重役をセクハラで告発。背景にはブラックな労働慣行

「グランド・セフト・オート」シリーズや「レッド・デッド・リデンプション」シリーズで知られるアメリカ大手ゲームスタジオのロックスター社元重役ジェロニモ・バレラ氏を、同社の元デザイナー男性がセクハラで告発しています。

Kotakuの取材に応じたコリン・バンシューさんはゲームデザイナーになることが夢で、恋人や友達との関係を投げうってまでカリフォルニアの同社にやってきましたが、この件のためにロックスター社のみならず業界をも去る結果に終わったといいます。

バンシューさんの生々しい証言と、ロックスター社に対する告発をまとめました。

ロックスター、悪夢の新歓

RDR2 バー

2014年11月、カリフォルニアでロックスター社の新歓が開かれました。ディナーの席でバンシューさんが2人の新人デザイナーと共にいるところにバレラ氏が話しかけてきました。バレラ氏はフレンドリーでしたが、バンシューさんばかりに話しかけてきたといいます。バンシューさんは「バレラは私だけと話していて、他の2人は入り込む余地がありませんでした」と回想しています。

それからバレラ氏がレストランを離れると、ロックスターのリードデザイナー2人がバンシューさんたち新人3人に近くのナイトクラブへ行こうと誘いました。道すがら、リードデザイナーたちは新人にバレラ氏の振る舞いについて警告しました。「なあ、君達3人が今夜のうちにクビになるのを見たくないんだ。だからなんにせよ彼のカンに触ることはしないでおけよ」。

ナイトクラブに着くとバレラ氏は他のロックスター社員たちと共にボックス席にいて、ウォッカやミキサーといった一式も既に揃っていました。バンシューさんらも席に着き、しばらく会話を交わしました。「私が飲み終えると、バレラはすぐに次の一杯を用意して、『ほらほら、もっと飲むんだ』と言うのです。どんどん私に飲ませようとするので、私が自分で何か取って飲んだり食べたりするということはありませんでした」。

バンシューさんはそこで3杯飲みましたが、当時の記憶は今でもはっきりしているということです。「私はちゃんと覚えています。記憶が飛んだりするほど酔ってなんかいませんでした」。バレラ氏はテーブルの端へと移り、誰か一緒にダンスフロアに行こうと言いました。バンシューさんが名乗り出ました。問題はそれからでした。

「バレラは立ち上がり私のそばへとやって来て、他に言い方を知らないのですが……私を盛んに愛撫しだしたのです。前触れも何もなく、いきなりそうしだしたのです。私はパニックになって……永遠のように感じましたが、実際には数分でしかなかったはずです」。

バレラ氏は「愛撫」をやめると同僚たちのいるブースに戻りました。それから、脚を広げて、バンシューさんに自分の膝に乗るよう身振りで指示しました。バンシューさんは凍りつきました。

「どんな選択肢があるだろう? A) 何もしなければクビになる。 B) バレラは私に愛撫されたいのかもしれないが、そんなことは絶対したくない。 C) 何か違ったことをやれるかもしれない。例えば、『オーケー、ええと、バレラに触れないようにラップダンスで腰をクネクネさせるとか?』私はそうしました……おぞましいと思われるのは分かっていますが、他にどうしろと?くそっ!私は入ったばかりで、この仕事のためにあまりに多くを犠牲にしてしまっていました」。

バンシューさんが行為を始めて数秒で同僚がやめさせました。「恥ずかしく、決まりが悪く感じました。男に興味はないし、ましてバレラには一切興味はありません。とても屈辱的でした」。同僚たちはこの一件に対するコメントを拒否しました。

その後、バンシューさんはバレラ氏から離れた席に座って茫然としていたといいます。「私は水を手に取ってじっと眺め、20分ほどずっと沈黙していました。その間、ずっと耳鳴りがしていて、どうしたらいいのか分かりませんでした。『私はクビになるのか?一体何がどうなっているのか?』私はただ呆然としていました」。

それからバレラ氏はテーブルをぐるっと回ってバンシューさんの隣に座りました。同僚との会話の最中、バレラ氏は再びバンシューさんの内股を愛撫しだしました。「私はグラスを手に持ってただ座っていました。うつむいて、グラスの水が震えているのが見えました」。

その後ロックスターで指導的立場にある社員がバレラ氏にやめるように言い、それでバレラ氏は愛撫をやめて立ち上がり、テーブルの反対側へと戻っていきました。

最終的にバンシューさんは席を立って同僚2人と共に出口へと向かいました。「バレラは『もう帰るのか?』と言いました。私はうつむいて「はい」みたいに答えました。目を合わせることもできなかったのです。『もっと残れよ。ダメだろうが。』『すみません、もう車が来ているので。』バレラはむっとしていましたが、『すみません、帰らないといけないんです。』みたいな」。

人事部の対応が豹変

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この件の直後、バンシューさんはサンディエゴの人事部にセクハラの件を訴えました。生々しい訴えであったこともあり、その時の人事部はバンシューさんを疑っていませんでした。人事部はバレラ氏の行為は「ロックスターではない」とまで断言しました。

ところが、人事部長のロブ・スパンピナート氏がニューヨークからやってくると様子が一変します。その晩ナイトクラブにいたバレラ氏を含む複数の従業員に聴取したところ、酔っていて誰も覚えていないというのです。そしてバンシューさんは「バレラがその晩のことを『覚えていない』と言う以上、できることはあまりない」と通告されました。

さらには12月になると、バレラ氏は酔っぱらっていて覚えてないと弁明したのではなく、そもそもそのような事実はなかったと断言したのだと、人事部は説明を変更しました。その場にいた同僚たちも誰もそのような行為を見ておらず、彼らが何かを恐れて嘘をついていると考える理由もなく、よってバンシューさんの訴えは事実無根だというのです。

ロックスターはバレラ氏に是正措置を取ることはないとする一方で、バンシューさんが望むならこの件についてバレラ氏と直接話し合う機会を提供するという、セクハラ被害者に対しておよそ信じがたい回答でした。

誰一人としてバンシューさんのために証言せず、ロックスターに留まることを望んでいたバンシューさんも失望して転職活動を始め、2015年3月にはロックスターを離れました。1年間Oculusのエンジニアを務めた後、結局ゲーム業界をも離れ、今では全く別の職種に就いているということです。

バレラ氏は「ロックスターのダースベーダー」

ロックスター社の労働環境の劣悪さについてはこれまでも何度となく伝えられてきました。

ニューヨークマガジンの『レッド・デッド・リデンプション2』の記事では、ロックスター・ゲームス創設者ダン・ハウザー氏自らがスタッフに週100時間の労働をさせていたと自慢げに語っており、その後「常に週100時間労働させていたわけではない。ピーク時だけだ」と弁明する事態となっています。

「クランチ」と呼ばれる開発のピーク時での過重労働はアメリカのゲーム業界全体でも問題視されるようになってきていますが、ロックスターの過酷な「クランチ」はゲーム開発の終盤に限らずいつでも発生しているそうです。 2010年にはロックスター・サンディエゴの従業員の妻たちがGamasutraで告発する事態にまでなりました。ロックスターは当時この告発をフェイク扱いしましたが、後に過重労働の問題を認めました。

Kotakuのインタビューを受けたあるロックスター社員によれば、ロックスターには「Culture of Fear(恐怖の文化)」があり、社員たちは残業をしないせいでロックスターから報復を受けることを恐れているそうです。ロックスターにはとにかく労働時間が長ければいいという考え方が蔓延しており、一部プロジェクトにおいては残業は事実上強制となっているようです。

ゲーム批評で知られるジム・スターリン氏のYoutubeシリーズJimquisitionでは、ロックスター社の元社員たちが匿名で、同社のブラックぶりと、その中核的存在としてのバレラ氏について証言しています。

「バレラはロックスターのダースベーダーだった。ハウザー兄弟(ロックスター創設者)が皇帝なら、バレラは皇帝に送り込まれてクソを片付ける役ってわけだ。[……]バレラはチームの生産性を保つためにクソどもをスタジオから蹴り出して、『おう、ところで、ハウザーさんたちが一月ほどしたら来るから、仕事しなきゃな』と言うのさ」。

「バレラは狭量で、いつだって誰かと個人的な確執があって、仕事を恐ろしく不快なものにしていた。癇癪持ちで、すぐ怒鳴ったり物を投げたりしていた。バレラの前で何か一つ間違ったことを言うかでもしようものならその場でクビになりかねない」。

こうした証言は、バンシューさんが新歓の日に先輩デザイナーたちに忠告された話と一致しています。バレラ氏はパワハラ行為を用いて従業員たちを服従させていく役割を担っていたというのです。

体育会系な企業体質

バンシューさんの一件は社内で噂となっているそうで、事件当時の従業員の一人は、バンシューさんが嘘をついているとは思えないが、バレラ氏の行為は体育会系によくある一種のジョークだったのではないかという見方を語っています。あまりにしつこく生々しい「ジョーク」ではありますが、ロックスター社にはそうした「ジョーク」を許容する男子学生のクラブのような体質があったともJimquisitionの証言は伝えています。

バレラをはじめとする重役たちはしばしばカジノやストリップ劇場でのパーティーを開き、そうしたパーティーに呼ばれ取り入ることが出世のために欠かせないことになっていたというのです。「ディナーでは、バレラは処女喪失の議論をはじめ、酔っ払った男子学生同士のように私達に共有させようとしました」。こうしたセクハラに「引いて」しまったため、この元従業員はバレラ氏に睨まれてしまったとのことです。

League of Legends』のライアットゲームズもセクハラ文化が根付いていると告発されていますが、ライアットゲームズは批判を認め、改善することを約束しました。『Mortal Kombat 11』のネザーレルム・スタジオは過重労働とおよびゲーム開発にグロテスクなイメージ画像を用いることでスタッフがPTSDを発症していることなどを告発されています。近年は大手スタジオが内部告発される事例が増えていますが、ロックスターはその「常連」です。

バレラ氏は後に退社

ハウザー兄弟はこうした体質を是認していた一方でロックスター社の名声を強く気にかけており、『マックス・ペイン3』の開発中に過労問題が報じされ批判を浴びると悪役のように扱われることに衝撃を受け、体質の(少なくとも外聞の)改善に乗り出したといわれています。

バンシューさんとの一件の後もロックスターにとどまり続けたバレラ氏ですが、2018年に退職しました。「より広い道を求めて」と表向きでは説明されていますが、実際には「#MeToo運動で流れが変わり、カジノやストリップ劇場で遊びまわるバレラ氏のリスクが高まった」ための尻尾切りだとJimquisitionの証言者は伝えています。

ロックスター社はこれまで『グランド・セフト・オートV』や『レッド・デッド・リデンプション2』といった素晴らしいゲームを生み出してきました。その裏で非人間的な労働慣行が蔓延っていたのだとすれば残念です。

他方、近年は労働環境を改善しようとしているゲーム会社の取り組みも伝えられるようになってきています。任天堂は『あつまれ どうぶつの森』の発売予定日を2019年から2020年3月20日に変更しました。ニンテンドー・オブ・アメリカのダグ・バウザー社長はこの発売延期の理由は「過重労働を避けるため」だと明言しています。

ロックスターで数年間の自由な人生を犠牲にすれば、従業員は履歴書に「GTA」や「RDR」の文字を載せることができるようになり、その後は好きなゲーム会社で就職できるようになります。だからこそロックスター社員は熱心に働いていますが、良くも悪くもメディアでの内部告発が当たり前になった今のゲーム業界では、昔ながらのやり方は限界を迎えているのかもしれません。

セクハラで告発を受けた業界の大物は他にUnity CEOのJohn Riccitiello氏、ニンテンドーロシアCEOのYasha Haddaji氏、テンセントのグローバルコミュニティマネージャーNick Zasowski氏、EAのシニアディレクターPhilippe Grenet氏など。

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