• HOME
  • 全記事
  • レビュー
  • 【評価/感想】『デス・ストランディング』レビュー お使いクエスト×ゼルダ×ダークソウル【デススト】
デス・ストランディング

【評価/感想】『デス・ストランディング』レビュー お使いクエスト×ゼルダ×ダークソウル【デススト】

DEATH STRANDING

DEATH STRANDING
ジャンル  : アクション
機種    : PS4/PC
開発    : コジマ・プロダクション
発売日   : 2019年11月08日
Amazonで詳細を見る
  
総評

ゲームのメッセージを受け取るためには長い退屈を耐え抜かなければならない。山を乗り越えた時に見る景色は美しいが、すぐに飽きてしまう。

4/10
良い点
  • 素晴らしい風景
  • 第四の壁が壊れる瞬間
  • BBとクリフの存在
  • 苦痛を癒すLOW ROARの音楽
  • カットシーンのクオリティはさすが
悪い点
  • 序盤はトレーラーで見たことのあるシーンばかりで辛い
  • 報酬が嬉しくない
  • 比喩表現が多すぎて会話がダサく感じる
  • スキップされる前提の短いムービー
  • 反復的なミッション

このゲームの点数にはかなり悩んだ。好意的に見れば、つまりこのゲームで感動した部分や楽しかった部分、驚いた部分にフォーカスして考えれば、10点中8点にすることもできた。逆に、そもそもコジマ・プロダクションが作ったのでなければ序盤でこのゲームを放棄していたのだから、そのレベルの作品としてもっと厳しい点数にすることもできた。

その評価は、このゲームにおいてプレイ時間の大半を占める「移動」をどう考えるかということにかかっている。説明していこう。

配送依頼=お使いクエスト

デススト お使い

『DEATH STRANDING』は配達人のゲームだ。荒廃したアメリカで、主人公のサム・ポーター・ブリッジズは依頼を受けて依頼者の場所から配送先に物を運ぶ。この「移動」がゲームの主眼となる。わかりやすく言えば、『DEATH STRANDING』は「お使いクエスト」をメインに据えたお使いゲーなのだ。

「お使いクエスト」というのは昨今のゲーマーから蛇蝎の如く嫌われているゲームシステムだ。依頼者から「〇〇が欲しいから何個持ってきてくれ」「ゴブリンを5匹倒してくれ」という依頼を受け、達成する。依頼の背景にはほとんどストーリーがなく、やっていることはただの移動と雑魚戦なので面白くない。この「お使いクエスト」は主にMMOなどでプレイ時間の水増しのために採用されており、持ってくる〇〇を変えただけで似たようなクエストがたくさん存在するためその無意味さと退屈さが際立つ。『DEATH STRANDING』では雑魚戦が少ないので、「お使いクエスト」のうち「移動」の部分が延々と繰り返されることになる。

だとすれば、「移動」が楽しめれば『DEATH STRANDING』は面白いし、「移動」を気に入らないなら『DEATH STRANDING』は面白くない。小島秀夫監督が表現する「移動」が、平凡なMMOやRPGの「移動」と一緒であるはずがない。一体どういうものなのか。

補足
サムには持てる荷物の重量制限があるため「インベントリ管理」と、長旅ではサム本人の体力消費、ブーツの交換、外部骨格の充電といった「スタミナ管理」が必要になる。この2つのシステムも様々なゲームで採用され、そして使い方を誤れば嫌われる代物だが、「お使いクエスト」と比べればそれほど大きな問題ではない。

『デス・ストランディング』は移動をどうゲーム化したか

アクションアドベンチャーゲームにおいて「移動」に意味を持たせようという試みは『DEATH STRANDING』が初めてではない。

『Marvel’s Spider-Man』『バットマン アーカム・シティ』『GRAVITY DAZE』は自由自在に空を飛び回る主人公を設定することで、移動自体を爽快な遊びにした。

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』や『ニーア オートマタ』は主人公に高い身体能力を与え、探索の楽しみを残しつつもできるだけ退屈な移動を排除している。

ゴッド・オブ・ウォー』の移動それ自体は標準的だが、ひっきりなしにクレイトスやミーミルが会話し、しかもその内容はテイルズシリーズのスキットとは違って世界観に密接に関連する上にめちゃくちゃ面白い。これならもっと歩いていたいくらいだ。

ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の主人公リンクはゲームのヒーローにしては足が短いので、必然的に広い世界をゆっくり歩きまわるゲームになる。その移動を飽きさせないために存在するのが大量のコンテンツだ。試練の祠だったりイーガ団だったり高所からのパラセールだったり、面白い発見と物理現象が移動を飽きさせない。

つまり、退屈な移動を退屈でなくするためには、「高い移動能力」または「移動中に発見できるコンテンツ」のどちらか、あるいはその両方が充実していなければならないのだ。

この「移動」という問いに対し、『DEATH STRANDING』はどう答えたのか。サムの身体能力は低く、スピードスケルトンでダッシュしている時以外の動きは基本的にゆっくりで、慣性を軽減できるアップデートが入る前の初期『ウィッチャー3』のゲラルトのようにフラフラ歩く。時間をかけて山を登るという探索スタイルは『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』に似ている。ゼルダと違うのは、『DEATH STRANDING』のフィールドには意味のあるコンテンツがほとんど存在しないという点だ。国道に投入できる金属やセラミックが落ちていても歩いている時はまず拾わないので意味がない。落とし物を積極的に拾って届けて楽しむプレイヤーもいるかもしれないが、筆者の感覚ではこれは移動の退屈さを忘れさせるほどの遊びではない。

また『DEATH STRANDING』のマップはフォトリアルを志向しているだけあって、ゼルダのように地域の違いで急激にマップのテイストが変わったりしないので、視覚的にも飽きがくる。要するに、「移動能力」と「移動中に出会うコンテンツ」という2つの観点から見た時、『DEATH STRANDING』の移動は面白くない

ビデオゲームの移動

ビデオゲームの移動は様々


では面白い移動のためには、試練の祠か、おしゃべりか、ウェブ・シューターか鉤縄が必須なのか?そうではない。その移動にストーリーがあれば面白い。ストーリーテリングは言葉でなくても構わない。RPGのラスボス戦の前で何もない長い廊下をただ歩かせる演出のように、その移動がいかに重要なものなのか、雰囲気で理解させればそれで良いのだ。

移動がストーリーの一部なら、そしてストーリーが面白いなら、移動がただの移動であることに問題は無い。『DEATH STRANDING』の「配送依頼」の背景にあるストーリーとは一体何だろうか?

長すぎるカットシーン、薄すぎる物語

カイラルアーティスト

残念ながら、『DEATH STRANDING』の「移動」の背景にはろくなストーリーがない。

様々なトレーラーで魅力的な物語を仄めかしてきた『DEATH STRANDING』としては驚くべきことに、ほとんどのクエストの物語性は薄い。

実際にクエストを一つクリアしてみるとわかりやすい。まず依頼を受ける。ごく簡単な説明を受ける。荷物をかついで移動して配送先に到着する。「おお 来たか/よし 新品同様だ 立派なもんだ」<依頼達成>「じゃ 気を付けてな」 以上、終わり。これが『DEATH STRANDING』のクエストだ。この手のお使いクエストはサブクエストでさえやりたくないものだが、『DEATH STRANDING』ではメインクエストにもこうした依頼が混入してくる。

配送業に励んでいるうちに、初めて物語らしいものに出くわすのがエピソード3のジャンク屋とカイラルアーティストのクエストだ(メインストーリーではこれより前にフラジャイルとヒッグスのあーだこーだがあるが、その時点では2人とも思わせぶりなセリフを言ってるだけであまり話が進んでいない)。これまでずっとおあずけになっていた物語が超しょぼいメロドラマとして前景化するのには驚いた。

デススト ママー

その後、ママーやハートマンといった個別には面白い物語を持った面白いキャラクターが登場しても、配送業のモチベーションにはつながらないのが残念。配送はあくまで地質学者の治療のためにカイラル物質除去剤を運ぶとかで依頼者が欲しいものを持っていくだけであって、そこに没入できるような物語はほとんどないのだ。

とはいえ、より大きなストーリー、つまりアメリカの端から端までカイラル通信を繋げるというメインのストーリーは常に存在する。メインストーリーは長いカットシーンと共に濃く描写されるのだが、何しろ「繋がりは大事」というメッセージが何十時間も延々と繰り返されるので、これではいくらカットシーンの出来が良くても飽きてしまう。「繋がり」というテーマはありつつも、それと関連した複数のプロットラインがあるべきなのではないだろうか?何もかもが「繋がり」の話だと、サムの言うように「ある種のカルト」にしか見えない

デススト カルト

特に終盤の伏線回収は圧巻だ。クールな映像描写の中で色んな新事実が明かされ謎は解けていくのに、結局彼ら彼女らが一番に言いたいことはエピソード1から変わってない。展開されてきた物語に意味があるような気がしないのだ。

野心的だが欠陥の多いストランド・システム

デススト ストランドシステム

『DEATH STRANDING』は「移動」がメインのゲームだが、それ以外の遊びが一切存在しないわけではない。『メタルギアソリッドV』のステルスミッションのような自由度はないが、BTの近くで息を殺して歩くのはなかなかの緊張感だ。『ゴッド・オブ・ウォー』などと比べればかなり見劣りするが、ボスバトルは息抜きに丁度良い。

しかし、なによりも注目すべきは「オンラインで協力できるクラフトシステム」、つまり小島秀夫監督の言う「ストランド・システム」だろう。

小島秀夫監督はファミ通のインタビューで「ストランド・システム」の新しい面白さを「寂しくて孤独だったけど、自分みたいな人がほかにも世界中にいる」「どこかの誰かが操作しているサムを感じながらプレイする」感覚の間接的コミュニケーションとして説明している。

『DEATH STRANDING』の移動は退屈だ。一つ一つの配送依頼も薄味だ。それでも、オンラインでどこかの誰かが操作しているサムを感じながらプレイするなら、その移動も刺激的なものになるのだろうか?

それって10年前に『Demon’s Souls』が幻影や血痕やメッセージという形で実現してるんじゃないの?そもそもほとんどのオンライン建造物には何の「繋がり」も感じないし、何のために造ったのかがはっきりわかる一部の便利なオンライン建造物だけが「いいね」と「繋がり」を感じさせてくれるに過ぎないのでは?役に立とうが立つまいが繋がりを感じさせてくれる「幻影」から後退しているのでは?などという野暮なツッコミはよそう。ソウルシリーズには『DEATH STRANDING』のクラフトシステムはなかったので、確かにこれはソウルシリーズの進化系だ。

インタビューでは他に「ふつうにソロプレイをしている感覚だけど、自然とほかの人とつながっているという状態です。この要素がないと、新しいおもしろさはないです。」という、これまた10年前にフロムの宮崎英高ディレクターが語っていたのとほとんど同じ狙いが説明されている。

実際、このストランド・システムが目指すところは良い感じに聞こえる。

「ストランド・システム」は悪くない。ただ上手く実装されなかっただけだ。筆者がゲームをプレイする中で看板のメッセージ以外で真にポジティブな繋がりを感じたのはエピソード8の険しい山中に発電機やハシゴを見つけた時、エピソード10でちょうどいい位置にジップラインを見つけた時くらいだ。それ以外は基本自分でクラフトしてやりくりしたので、繋がりも何もない。

個人的な体験としては、『DEATH STRANDING』は退屈なソロゲームに、ごく稀にオンラインの刺激がある、という感じだ。

思うに、「ふつうにソロプレイをしている感覚」にさせるためにはまず前提としてソロプレイが充実していなければならなかったのだ。ソロプレイが面白くて、しかもオンライン上での繋がりが刺激になる、という形が最も「自然」な繋がりであって、これを強引にでも繋がせたいのであれば、フィールドをもっともっとオンラインの建造物だらけにしなければならなかったのだ。難易度は崩壊するかもしれないが、ジップラインだらけの雪山は「ストランド」の宝庫になったはずだ。

『デス・ストランディング』レビュー結論

デススト ヒッグス

ここまで『DEATH STRANDING』を批判してきたが、見るべきところが無いわけではない。「物語」も「ストランド・システム」も、その面白さが全く理解できなかったわけではない。

裏切り者を警戒してこそこそ密談するサスペンス風演出は面白かった。

deadman

ホワイトアウト寸前の雪山に「諦めるな」の看板で作られたルートを見た時には感動し、「ストランド」を感じた。

デススト 雪山

後半、奇妙なBTが出現するパートは小島秀夫監督のホラーゲームクリエイターとしての才能に震えた。

新しいシティの近くで流れるLOW ROARの音楽は心が洗われるようで、それまでにすっかり慣れていたグラフィックの素晴らしさ、景色の美しさに改めて気付かされた。

『DEATH STRANDING』はプレイし終わったら1日でその内容を忘れてしまう量産型のゲームではなく、ただ出来の悪いクソゲーでもない。これまでにないゲームデザインに挑戦し、既存のゲーマーの価値観を揺るがすために作られた真のオリジナル作品だ。

それでも、プレイ時間の大半を占める退屈は苦痛だ。もしこの「ストランド・ゲーム」が新しいジャンルとして確立しても、その新作はプレイしたくない。このゲームについて語るためにはひょっとしたら「面白さ」や「点数」以外の尺度が必要なのかもしれないが、点数は4点。

『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』関連記事

レビューカテゴリの最新記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。